Vol.292『行動させる秘訣は、”必要な労力を最小化”すること。』
最小努力の法則がイノベーションに与える影響は極めて大きい。この法則によれば、人々が新しいアイデアや機会について検討するとき、最初に考えるのはそのアイデアがもたらすメリットでも価値でもない。いちばんの関心事は行動に要するコストだ。 映画、テレビ、音楽といった創造物の楽しみ方が時代とともにどのように変化してきたかを見てみよう。まずは音楽だ。私たちの親の世代は私たちよりも良い音楽−少なくとも音質という点では−を聴いていた。現在は、ほとんどの人がスマートフォンでストリーミング再生した音楽を安物のワイヤレス・イヤホンで聴く。この方法のほうが、かつての音楽プラットフォームよりはるかに簡単に音楽を聴くことができるからだ。スマートフォンを使えば、これまでに録音されたほぼすべての曲をすぐに聴くことができる。だが、この便利さは音質の犠牲の上に成り立っている。というのも、ファイル・サイズを小さくするために、どのストリーミング・サービスでも音声圧縮を使用しているからだ。そのため、アーティストがリスナーに聴かせたいと思った音楽の一部は文字どおり切り捨てられているのである。 |
(『「変化を嫌う人」を動かす』』
ノレン・ノードグレン+デイヴィッド・ションタル 著
草思社 114頁より引用)
わたしがコンサルタントとして、クライアントや塾生の成果を願って、「◯◯をしましょう」と提案をした時に、行動してくれる場合とそうでない場合とがあります。
相手が行動すれば成果が出るので、コンサルタントとして貢献できた実感を味わい、行動しなければその逆となる。よって、コンサルタントは「どうすれば人が動いてくれるのか」を常に考える職業です。そこで陥りがちなのは「その行動をすればどんな良いことがあるか(逆に、その行動をしなければどんな悪いことがあるか)」を強調して説得することです。
例えば、ドンブリ経営で会社の数字を知らない社長に対して、「経営数字を見て納得の経営判断ができると、こんなに良いことがあります。だから決算書を読めるようになりましょう」と説得したとします。理屈で言えば、その方が失敗も防げるし、より安心して経営ができるとわかる。でも、動かない。なぜなら、その社長は「決算書を読めるようになるための労力が大き過ぎる(と思い込んでいる)から」です。
そこでわたしが考えたのは、「”お金のブロックパズル”という図解を使えば、経営数字におけるたった2割の知識で、8割以上の経営判断に対応できる」という切り口でした。
厳密に言えば多少の正確さは損なわれるけど、「社長が経営判断に使う目的であれば、そのほとんどをカバーできる」という効率さは、まさにスマホで音楽を聴くのと同じ効果があったように思います。完璧主義を目指すと、そもそも動かない。そうであれば、多少のレベルダウンは受け入れて、動いた方が成果は出る。新たな挑戦においては”脱★完璧主義”の発想が大切なんだ、と感じました。
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