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2021年10月25日 (月)

Vol.270『人の話を興味深く聞く秘訣は、その人生ドラマに触れること。』

ルポルタージュを書くという仕事についたのは、やはり偶然からだったとしか言いようがない。就職もしないでぶらぶらしている私を心配して、大学のゼミナールの教官が何か文章でも書いてみないかと雑誌社を紹介してくれたのだ。

別にどうしてもと選んだ職業ではなかったが、やってみると意外なほど面白かった。

役者が、自分たちの仕事の面白さを説明する時によく用いる言葉に、何種類もの人生を味わうことができるからというのがある。私にとってのルポルタージュのライターとしての面白さというのもそれと似ていたかも知れない。ひとつの世界を知るために、その世界に入っていき、そこで生きてみる。束の間のものであり、仮りのものでしかないが、そんなことを何度でも繰り返せるのだ。あるいは、その存在の仕方は、アメリカのハードボイルドの小説に出てくる私立探偵と似たようなところがあったかもしれない。

くたびれかけたハードボイルド・ヒーローのひとりはこんなことを言っている。

「私は、人々の生活の中に入り込み、また出て行くのが好きなのです。一定の場所で一定の人間たちと生活するのに、退屈を覚えるのです」

 

(『深夜特急2マレー半島・シンガポール
沢木耕太郎 著
新潮文庫 171頁より引用)

わたしのコンサルタント向けの養成塾では、「アドバイス(教える)に頼らず、質問と事例ストーリーで相手の盲点に気づかせてビジョン実現に貢献する」やり方を伝授しています。

人に言われたアイデアより自分の中から生まれたアイデアの方が、行動に移しやすく、成果が出やすいからです。そんな中、塾生からよく持ちかけられる相談の1つがこれです。

「つい、スグにアドバイスをしてしまいます。もっとちゃんと話を聞いてあげるべきだと思うのですが、黙っていられなくて・・・」

彼らが「つい、スグにアドバイスしたくなる」理由は何か?

突き詰めるとそれは、「その人が気づいていないことに自分は気づいているから、伝えてあげたい」という貢献心でしょう。しかし、それが本当の意味で「貢献」となるのは、相手がそれを望んでいるときだけです。それ以外の貢献は、「お節介」です。

相手が「あなたの意見を聞かせて」となるまでは、相手と自分の情報量が揃うまで話を聞いた方がいい。では、どうすれば途中で口を挟まず、人の話を聞けるのか?

その秘訣が、冒頭の本にあるように「他人の人生ドラマを少しの間、生きてみる」発想です。

小説や映画を見るとき、わたしたちは勝手にその先の展開を想像します。実際のストーリーがその展開と違っても「いや、それは違う。こうした方がいい」といちいち声に出さないですよね?「なぜ、そっちに行ったのか?どんな背景があったのか?」と疑問と興味を持ちながら、さらに次の展開に注目しますね。パートナー型コンサルタントがクライアントの話を聞くときの感覚は、それに近い感じです。そうやって興味を持って聞いてくれるから、相手も口数が多くなり、自分の中から答えが吐き出される。そんな聞き上手なコンサルタントをこれからも多数、輩出していきたいと考えています。

 

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