Vol.260『問題や目標に圧倒されないコツは、相対化すること。』
期待に応える自信がないとき、「これしかない」「ここから逃れられない」と思うほどプレッシャーは大きくなる。逆に「ほかにも大事なものがある」「逃げ場がある」と思えばプレッシャーは小さくなる。言い替えるなら、問題を相対化できるかどうかである。 大相撲で幕内最高優勝41回(2019年1月現在)を誇る、史上最強といってもよい大横綱の白鵬。その白鵬も数年前、大鵬が持っていた32回の優勝記録を前にしたときは大きなプレッシャーを感じていた。そのとき白鵬は、彼が尊敬する王貞治ソフトバンクホークス会長から「32回と考えるのではなく、35回、40回と考えたら楽になる」と助言されたそうだ。それが心の支えになり、余裕をもって自分の相撲が取れるようになったという。 このエピソードが物語るように、目の前の目標よりはるか先に目標を置くことによって、目の前の目標を相対化すればよい。おそらく王会長自身、現役時代には手が届かないほど大きな目標を抱き、それを追求することで結果的に通算868本塁打という金字塔を打ち立てたのだろうこれは勉強や仕事、そのほか日常生活にも通じる話である。 |
(『「承認欲求」の呪縛』
太田肇 著
新潮新書 302頁より引用)
真面目な人や成長意欲の高い人に多い傾向の1つに、「目の前の問題を深刻にとらえ過ぎて、気持ちが重たくなる」があります。また、気持ちが前向きなときにはワクワクする対象であったはずの「大きめの目標」も、気持ちが後ろ向きになると、それがプレッシャーとなり、圧迫感を与えることがあります。これは、わたしも他人事ではなく、当てはまります。
それを克服したり、少なくとも和らげるコツが「相対化」です。
人間はそもそも比較したがる生き物です。だからこそ、「より大きな問題や目標」と比較することで「それに比べれば、まだマシだ。克服できそう」と感じやすくなります。
そのことを垣間見た、あるエピソードをご紹介します。
以前、ホノルルマラソンに出場したときのこと。その年ゲストランナーとして出場していたフィギュアスケートを引退したばかりの浅田真央さんと20km近くに渡って並走するチャンスがありました。そのとき、彼女が伴走するコーチとかわしていた会話を今でも覚えています。
真央さん「あと何km?」 コーチ「あと5kmです」
真央さん「じゃあ、あと10kmと思って走る!」
この何気ない会話は、当時のわたしの脳に強烈に刻み込まれました。まさに「目標を相対化」することで、目の前の問題(足の疲労に耐えてゴールすること)をスムーズに乗り越えようとしていたのでした。比較したがる人の習性も、うまく利用すれば人生をうまく乗りこなすツールになるのだと気づかされました。
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