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2011年5月 6日 (金)

Vol.145『影響される人と、影響をあたえる人。』

『武士道』で稲造は、アメリカの思想家エマーソンの、「群衆の中に賢者が一人でも居れば、その場に居合わせた人は、一人残らず賢くなる。知恵の伝染力はそれほど速いのだ」という言葉を引いて、善きことも、悪しきことと同じようにその影響力が強力であることをいっていますが、これを私は、「その集団で、誰か一人でもいいから頑張ればいい。そうしたら、まわりが全部巻き込まれ、それは必ず花開く」という意味だと考えます。

正しい基盤があれば、オンリーワンでいることも恐れる必要はない。やがてそれは、まわりの人たちに伝播していく。まさに武士道は、かく生きるための精神基盤だったのです。

(『真の成功者になるための「武士道」の読み方』
梅谷忠洋 著 学研 P.53より引用)

人はあるきっかけを境に、影響される側から影響を与える側にシフトすることがあります。
これまでのコンサル経験を通して、そんな姿をたくさん見てきたのですが、その一例をご紹介します。

その社長は一貫して「お客さんの幸せのために自社が何をできるか」を考え、また社員の幸せも常に考え、動いておられました。しかし、ある時期までは社長と社員の間にかなりの温度差がありました。社員から聞こえてくる声は、「給料を上げて欲しい」「休みがもっと欲しい」といった自分の待遇に対するリクエストばかり。
社長は、そんな「自分の都合ばかりを押しつけてくる社員」にストレスを感じていました。
それが3年後には一転。社員から上がってくるのは「どうすれば会社がもっとよくなるか」「どうすれば仲間がもっと働きやすい環境になるか」といった「経営者」目線の声ばかりに変わっていました。つまり、社長からすれば、ポジティブな意見が大半を占めるようになったのです。ミーティングを開いても、かつては沈黙が続いたり、冷たい緊張感が漂っていたのが、今では笑いの絶えない状態に。そして社長自身、以前は関係がぎくしゃくするのを恐れて社員に厳しいことを言えなかったのが、全く躊躇なく指摘できるようになりました。

その変化の理由を考えてみると、1つ思い当たることがありました。それは、3年前から社長が会社のおかれている現状をきちんと社員に伝え始めたということです。そして、「社長の意思決定の理由が、社員にもわかるようになったこと」が最大の鍵だったように思います。社員が会社に不満を言うのは、「待遇への不満」だと思いがちですが、実はそれだけではありません。「そのような待遇である理由がわからないことへの不満」が大半です。
そこを明確にし、公開したことで、社長の心の中で、社員への後ろめたさや気遅れがなくなり、影響される側から影響をあたえる側にシフトするきっかけとなりました。

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